新橋スリープ・メンタルクリニック
 

身体表現性障害 ( somatization disorder)


【概念と診断】
・DSM-IV-TRによる身体化障害の診断基準です
A. 30歳以前に始まった多数の身体的愁訴の病歴で、それは数年間にわたって持続しており、その結果治療を求め、
または社会生活に支障を来している。
B. 以下の各項目を満たしている
(1) 4つの異なった部位における疼痛症状、(2) 2つの胃腸症状、(3) 1つの性的症状、(4) 1つの偽神経的症状
C. 以下のどちらか
(1) Bの症状は適切な検査を行っても一般身体疾患(または物質によるもの)で説明できない
(2) 関連する一般身体疾患がある場合、身体的愁訴による社会生活に対する影響が予測をはるかに超えている
D. 症状は意図的に作り出されたものではない

身体化障害は、身体所見や検査所見からは十分に説明できない多くの身体症状を特徴とします。典型的な例においては、症状は30歳以前から始まり長年に渡って継続します。診断基準が示すように厳密に診断するには、4つの疼痛症状、2つの胃腸症状、1つの性的症状、1つの偽神経学的症状を示すことが必要です。具体的には、めまい、ふらつき、部分的な筋力低下、頚部の痛み、喉がつまる感じ、下痢、吐き気、全身倦怠感、耳鳴りなどの訴えがあります。
しかし実際には、診断基準をすべて満たす症例は少なく、その多くは鑑別不能型身体化障害と診断されています。いずれにせよ、身体化障害の診断にあたっては、身体的愁訴が多岐にわたっていて、不安や抑うつ気分よりも身体的な訴えが前面に表出していることが特徴です。
【疫学/病因】
欧米における、男女比は1:5と報告されており女性に多い疾患です。一般には10代に発症しやすいと報告されています。
心理社会的要因としては身体症状が、責任の回避、情動の表出、感情の象徴化など抑圧された本能的衝動の表現であると考えられていますが、ストレス因を自覚していないことも多くあります。
【治療】
現在多くの施設で行われている治療の中心は薬物療法です。薬物にはSSRI(抗うつ薬)や抗不安薬をはじめ、多くの種類があります。
精神的なストレス等が原因となっている疾患ですが、第一に身体的な疾患の有無を検査することが大切です。当院では、診察の結果内科などの疾患が疑われた場合、患者さんと相談の上、慈恵医大附属病院等の医療施設を紹介させていただいております。